SESからフリーランスになる前に確認したいこと|単価・税金・案件切れのリスクを整理
SESからフリーランスになる前に、単価だけでは見えないお金と案件リスクを整理します。

「今の現場、会社には結構な単価が入ってるらしい」
SESで働いていると、一度くらいは聞く話かもしれません。
自分の給与と現場単価を見比べて、
「これ、フリーランスになったほうがいいのでは?」
と思う。
気持ちは分かります。
ただ、月単価だけ見て判断すると、会社員のときには見えにくかった費用やリスクが抜け落ちます。
フリーランスになると、税金や社会保険を自分で管理する場面が増えますし、有給休暇や賞与、案件と案件の間の空白期間も考える必要があります。
なので、わたしなら**「案件が切れた月まで含めて1年間でどうなるか」**で考えます。
この記事では、SESからフリーランスを考えるときに確認しておきたい、お金・案件・働き方のポイントを整理します。
今の給与とフリーランスの単価を、そのまま比べない
たとえば仮に、
会社員として月35万円。
フリーランス案件なら月70万円。
という条件があったとします。
実際の案件単価は、経験・スキル・担当工程・契約条件などで大きく変わるので、70万円が一般的な水準という意味ではありません。
数字だけなら倍ですが、フリーランスの月70万円は、そのまま手取り70万円になるわけではありません。
事業で得た収入から必要経費などを差し引き、所得を計算したうえで税金を考えます。事業所得は基本的に「総収入金額-必要経費」で計算されます。
参考:国税庁
https://www.keisan.nta.go.jp/r6yokuaru/cat2/cat21/cat210/cid155.html
さらに会社員から独立すると、健康保険や年金の扱いも変わります。
会社員時代の給与とフリーランスの売上をそのまま並べるより、1年間で自分の手元に何が残り、何を自分で負担するのかまで見たほうが分かりやすいです。
フリーランスになると、自分で管理するお金が増える
独立後に考える主なものとして、
- 所得税
- 住民税
- 健康保険
- 国民年金
- 条件によっては消費税
- 会計ソフトや税理士費用
- PC・通信費などの事業経費
があります。
2026年度の国民年金保険料は、月額17,920円です。
参考:日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html
※2026年10月時点の公式情報を確認。保険料は年度によって変わります。
健康保険については、国民健康保険へ切り替えるほか、条件を満たせば退職前の健康保険を任意継続する方法もあります。
協会けんぽの場合、任意継続できる期間は最長2年間です。
参考:全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/voluntary_continuation/004/index.html
税金や社会保険は、前年所得や住んでいる自治体、家族構成などでも変わります。
具体的な金額や手続きについては、税務署・自治体・年金事務所・税理士などへ確認してください。
年間売上と、案件が空く期間をセットで考える
フリーランス案件では、
月単価70万円
のような表示をよく見ます。
仮に70万円の案件を12か月続ければ、年間売上は840万円です。
ただし、毎年きれいに12か月フル稼働できるとは限りません。
たとえば、
- 契約終了後、次の案件まで1か月空く
- 案件探しに時間がかかる
- 体調を崩して稼働できない
- 契約が更新されない
といったことがあります。
会社員SESなら、客先案件が終了したあとも自社の制度に応じて給与が支払われるケースがあります。
フリーランスの場合、契約がなければその期間の売上もありません。
ここで一度、自分の数字を作ってみます。
毎月の生活費はいくらか。
税金・社会保険用にいくら残しておきたいか。
1か月売上がなくても生活できるか。2か月ならどうか。
月単価だけを見るより、この空白期間を含めて年間の数字を作ったほうが、独立後の生活を想像しやすくなります。

自分の経験で、どんな案件に応募できるか確認する
SES経験者がフリーランスを考えるとき、
「今の現場単価が○万円だから、自分でも同じくらい取れるのでは」
と思うかもしれません。
ただ、自分名義で案件へ応募するときは、職務経歴の中身をかなり具体的に見られます。
たとえば、
- 開発言語
- 実務年数
- 担当工程
- 設計経験
- クラウド経験
- チーム開発経験
- 顧客との調整経験
などです。
「Java案件に3年いました」だけでは、自分が何を担当していたのか分かりません。
一方、
「Java/Springで既存機能改修、詳細設計、実装、単体テスト、レビュー対応まで担当」
と書ければ、案件側も自分の経験との相性を判断しやすくなります。
SESで開発経験が積めないときの話とも重なりますが、所属していた案件名と、自分が担当した工程は分けて整理しておきたいところです。
会社を辞めてから探し始めるより、今の経歴で応募できそうな案件がどのくらいあるのか、先に見ておくほうが動きやすいと思います。
関連記事
まだ開発経験そのものが少ない場合は、独立前に経験を増やす方法もあります。
SESで開発経験が積めないときどうする?現場変更・社内異動・転職の選び方
有給休暇・賞与・福利厚生も含めて比較する
会社員時代の収入を比較するとき、月給以外にも見ておきたいものがあります。
たとえば賞与のある会社なら、月給だけでなく年間賞与も会社員側の収入です。
社会保険料には会社負担分がありますし、有給休暇を使って休んでも給与は支払われます。
会社によっては、
- 住宅手当
- 資格手当
- 退職金制度
- 健康診断
- 学習補助
- 待機中の給与
などもあります。
フリーランスでは、こうしたものを自分で用意したり、必要に応じて費用を負担したりします。
契約によっては、休んだ日の稼働分が売上に影響することもあります。
会社員時代の年収が500万円だから、
「フリーランスで年間売上500万円を超えれば得」
とは単純には決めにくいです。
労災保険も、必要なら制度を確認する
フリーランスでも、一定の条件を満たせば労災保険の特別加入制度を利用できる場合があります。
ITフリーランスについては、2021年から特別加入の対象となる制度があり、2024年11月にはフリーランスを対象とする制度がさらに拡大されました。
ただし、対象となる働き方や加入条件は制度や時期によって変わる可能性があります。
加入を検討する場合は、厚生労働省の最新情報や特別加入団体などで確認してください。
参考:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/kanyu.html
独立すると「何も制度がない」というより、自分で必要な制度を調べて選ぶ場面が増える、くらいに考えておくとよさそうです。
税金は売上が入ったときから分けておく
会社員なら、年末調整で会社側が処理してくれる部分があります。
フリーランスになると、自分で収入や必要経費を記録し、確定申告を行います。
青色申告を利用する場合を含め、事業の取引を帳簿へ記録し、必要な書類を保存する必要があります。白色申告でも記帳や書類保存が必要です。
参考:国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
売上が口座へ入ったときに、
生活に使うお金。
税金や社会保険のために残しておくお金。
この2つを最初から分けて管理しておくと、あとで整理しやすいです。
年末になってから口座残高を見て「さて税金はいくらだろう」と始めるのは、ちょっと胃に悪いので……。
案件は単価以外の条件も確認する
案件情報を見ると、どうしても最初に単価が目に入ります。
ただ、実際に働くなら他の条件も確認しておきたいです。
- 契約期間
- 更新時期
- 精算幅
- 支払サイト
- リモート頻度
- 稼働時間
- 面談回数
- 商流
- 担当工程
- チーム体制
- 契約終了時の条件
- 案件の獲得ルート
案件の獲得ルートについては、直接契約なのか、フリーランスエージェントなどを経由するのかも確認します。
エージェント経由の場合は、表示されている金額と実際の契約条件の関係や、手数料などがどのように扱われるのかも見ておきたいところです。
料率や契約方法はサービスによって違うので、実際に利用するサービスの条件を確認します。
また、次の案件へつながる経験が増えるかも見ておきたいです。
フリーランスになっても、ずっと同じ補助作業だけを担当していれば、数年後の案件探しで選択肢が広がらないかもしれません。
関連記事
自社開発への転職も候補なら、今のSES経験から何を補えばいいかはこちらで整理しています。
SESから自社開発へ転職するには?経験別の準備ロードマップ
実際に案件を探し始めたら、単価だけでなく精算幅・支払サイト・商流・担当工程まで並べて見ると比較しやすくなります。
フリーランス案件の選び方|単価だけで決めないために見るポイント
SESからフリーランスを具体的に検討しやすい状態
次のような状態なら、案件を見ながら独立を具体的に考えてみてもよさそうです。
- 自分の担当業務を具体的に説明できる
- 現在の経歴で応募できそうな案件が複数ある
- 売上が止まる期間に備えた貯蓄がある
- 税金や保険を自分で管理することに抵抗が少ない
- 契約条件を確認する習慣をつけられそう
- 会社員の保障より、働き方や単価の自由度を取りたい
逆に、
今の経歴でどんな案件に応募できるか分からない。
貯金がほとんどない。
これから開発経験を増やしたい。
という状態なら、会社員のまま経験を増やしてから考える方法もあります。
独立は逃げません。
案件は逃げるかもしれませんが……。
独立前チェック:最低限ここまで確認する
最後に、独立を考えるときの確認項目をまとめます。
| 確認項目 | 見ること |
|---|---|
| 案件 | 今の経歴で応募できる案件が複数あるか |
| 売上 | 月単価だけでなく年間の見込みを出したか |
| 空白期間 | 1〜2か月案件がなくても生活できるか |
| 税金 | 税金用のお金を別に残せるか |
| 社会保険 | 健康保険・年金の切り替えを調べたか |
| 会社員との差 | 賞与・有給・福利厚生も含めて比べたか |
| 契約 | 支払サイト・精算幅・獲得ルートを確認したか |
| キャリア | 次の案件につながる経験が増えるか |

いきなり退職せず、先に案件を見てみる
フリーランスに興味が出たからといって、すぐ退職日を決める必要はありません。
まず、自分の経歴でどんな案件へ応募できるかを見る。単価だけでなく、求められる経験や担当工程、契約条件も確認する。
その結果、
「あと半年、会社員で設計経験を増やしたほうが選べる案件が増えそう」
と分かれば、今の環境で経験を取りにいく判断もできます。
逆に、現在の経歴でも複数の案件が候補になるなら、貯蓄や保険を確認しながら独立時期を考えられます。
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フリーランスに限らず、社内SEや自社開発も含めて次のキャリアを考えたい場合はこちら。
社内SEと自社開発、SES経験者はどっちが向いてる?仕事内容・働き方・向き不向きを比較
まとめ:案件が切れた月まで含めて考える
SESからフリーランスになるなら、現在の経歴で取れそうな案件と、1年間のお金の動きを先に確認しておきたいです。
わたしなら最後に、
「この案件が半年で終わり、次が1か月決まらなくても続けたいか」
を考えます。
その状態まで想像してもフリーランスの働き方を選びたいなら、独立を具体的に調べ始めるタイミングかもしれません。

